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【書評】政策問題をどのようにとらえ どのように解決するか

October 25, 2017

評者 吉原祥子 研究員

【書評】秋吉貴雄著『入門 公共政策学 社会問題を解決する「新しい知」』(中央公論新社、2017.6)

素朴な質問を投げかけられ答えに困った経験は多くの人にあるだろう。本書は、大学で長年、公共政策学を教える著者が、たびたび聞かれる「公共政策学って何ですか」という率直な問いに、わかりやすく答える本である。

朝の通勤・通学ラッシュといった身近な問題から、子どもの学力問題、少子化、空き家の増加まで、私たちの身のまわりには多くの課題がある。個人では解決しにくく、社会で対応すべき問題が「政策問題」であり、その解決案が「公共政策」である。公共政策を主に担うのは政府だが、社会のさまざまな利害にかかわるため、その決定は政治によって行われる。

公共政策学とはこうした政策問題と公共政策を研究の対象とするものである。その目的はよりよい政策を生み出し、問題を解決することにあると著者は説く。

複雑な政策問題に対応するために、公共政策学が取り扱う研究対象はおのずと広範囲にわたる。学問分野は社会科学から自然科学におよび、対象となるプロセスは問題の発見から政策の決定、実施と長きにわたる。本書は、そうした広範な研究対象を次の二つの視点から丁寧に論じている。

一つは、公共政策学の研究領域について、「政策決定に利用される知識(inの知識)」と「政策のプロセスを解明する知識(ofの知識)」の二つがあり、その関連付けが重要であるとする視点だ。前者は政策分析論、政策デザイン論などであり、後者は政策過程論である。個別の政策についての研究だけでなく、それがどのように活用されたか、もしくは活用されなかったかを分析することで、公共政策の改善につながる知識が提供できるとする。

そのうえで、本書では、もう一つの視点として、政策が決定、実施されるメカニズムについて、「政策問題の発見・定義」「政策案の設計」「政策の決定」「実施」「評価」という政策プロセスを示し、順を追って具体事例を盛り込みながら平易に解き明かしていく。

これらの二つの視点が縦軸と横軸となって、公共政策学という学問の構造と意義が立体的に立ち現われてくる。問題の解決案の方向性を規定するものとして、最初に政策問題をどのようにとらえ、どう定義するか(フレーミング)がとくに重要だとする点も興味深い。

人口減少時代を迎え、政策問題が複雑化する一方のいま、さまざまな課題に立ち向かうための指針となる1冊である。

2017年9月25日号『週刊金融財政事情』「一人一冊」より転載

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