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長期財政推計ツールについてよくある質問と回答

June 6, 2016

長期財政推計ツール(β版、とくにビジュアルインターフェース、以下、本ツール)について、利用されている方々からいろいろなご質問をいただいています。推計は、その特性から、経済や社会で将来おきることのすべてを投影できるわけではありません。できること/できないことがあり、利用者の皆さまに本ツールの特性をご理解いただくことが、開発・公開した意義にも適うと考えております。つきましては、これまでにいただいた質問ととりまとめたうえで、以下のとおり、回答致します。

Q1:財政出動や消費税減税の経済(GDP)に対する影響を見ることはできないのか、また、消費税をどんなに上げても下げても経済には影響しないのはなぜか?

A1:

本ツールは、ホームページにリンクにて掲載した「概要説明資料」の1ページ目に書いておりますとおり、日本の長期(2050年まで)の財政に関する将来推計です。基本構造としては、人口推計をベースに、マクロ変数に関する前提、医療介護部門、年金部門、財政部門の4つのパートから構成され、今後30~50年程度にわたる歳入と歳出を積み上げ式に計算し、基礎的財政収支や政府債務残高等の推移、つまり、一定の前提のもとでの日本の財政の見通しを投影しようとするものです。マクロ変数に関する前提は基本的に外生的な前提を与えるための計算は行うものの、他の部門の変化によって経済が変化することは想定していない、積み上げ計算の仕組みを採用しています。専門的には同時方程式体系とはなっていないツールです。同時方程式体系となる一般均衡では、財政の経済に対するさまざまな影響をフィードバックさせますが、本ツールではカバーしておりません。

同時方程式体系は乗数効果などの内生的な変数間の相互関係をモデルに組み込む場合に用いられますが(内閣府の中長期経済財政推計モデル等)、モデルをどのように設計するによって乗数効果の程度などが変化する(恣意性が排除できない)ため、経済想定の部分が議論になることも多いのが特徴です。

本推計は、政策を検討するためのいわば道具として作成しました。30年超の財政・社会保障部門の推移のような、特定部門の長期的推計では、前提に関する恣意性(モデル作成者の特定の経済想定)が長期間にわたって影響することを避けるため、簡潔なマクロ経済の条件を与えた上で、積み上げ計算することが標準的です。

欧州やOECDにおいても、上述の理由から財政の将来の推移について、本推計で採用した積み上げ型の方法で各国比較が行われていることを踏まえ、また、上記のような議論の広がりを避ける(恣意性の入り込む余地をできるだけ少なくするため)ため、本推計ツールは(多様な想定が可能な)経済学的な相互関係を前提とせず、専門家ではない一般の方々にもわかる非常に簡易な想定によって財政負担を推計する方法を用いたものです。

あくまでも、数パーセント程度での増減税などの税財政改革の想定や、経済成長率やインフレ率などの想定の違いが長期的な財政に及ぼす影響、すなわち将来の財政の姿を見通すことを主眼に作成したもので、財政の経済効果を見るものではないこと、つまり経済推計モデルではないことにご留意ください。

Q2:経済成長率(全要素生産性)をいくら高めてもプライマリーバランスが黒字化しないのはなぜか。

A2:

本ツールは、経済成長率が○%のとき消費税率を○%まで上げれば、あるいは、医療費の自己負担比率を現行の○倍に引き上げて歳出削減できれば、プライマリーバランスが黒字化できる、政府債務残高GDP比率が収束(段々と下がる)状態になるといった、そういう政策による組み合わせケースを見るシミュレーションツールです。ご指摘のような、全要素生産性を極限まで高めても、成長率が高まれば、給付も増えることを考えると、国民の負担(納税や保険料納付など)と給付(社会保障サービスの水準など)の関係を見直さないかぎり、今後の人口構成の推移を踏まえれば、財政健全化は困難であるということが言えるのではないかと考えます。なお、成長率が高まることでプラマリーバランスが黒字化するか否かは、その数値について専門家でも議論が分かれている税収弾性値を始めとした経済想定次第であり、本推計では中立の立場をとっています。

Q3:ビジュアルインターフェースにおいて、利用者が選択できるパラメーターが5種類あるが、歳入面では消費税なのはなぜか、また、歳出面では医療費なのはなぜか。

A3:

歳入面のパラメーターとして消費税を選択したのは、政策議論において、消費税をめぐるやりとりが多いことを踏まえてのことです。もちろん、政策の検討においては、所得税や法人税等によって国民負担を増減させることもありうると思います。ここでは、パラメーターを複雑化させるよりは、簡易なシミュレーションとして、消費税に代表させる形で選択しました。もちろん、オープンソースのプログラムでは、そうした設定を変えることは可能です。

歳出面のパラメーターとして医療費の自己負担比率を選択したのは、今後の人口動態の推移を踏まえれば歳出項目の中でもっともインパクトの大きなパラメーターの一つが医療費の自己負担比率でした。もちろん、国民医療費全体の縮減は歳出削減への影響は大きいですし、介護費用も同じように影響を及ぼします(介護の場合はより後年度の負担となって現れます)が、ここでも、上記の消費税と同様、簡易なシミュレーションとして、医療費の自己負担比率の変化に代表させることにしました。歳入と同様、プログラムにおいては、そうした設定の変更は可能です。

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